家造りに関する本感想文
一生に一度の家造り、多くの方にとっては初めての経験であり、それぞれたくさん本を読んで勉強されることでしょう。今回は私が家造りにあたって参考とした本の一部を紹介します。おすすめ星(★)5つで満点として私自身の満足度、私にとってのお役だち度を採点してみました。言うまでもなく感想本文も含めあくまで私から見た評価です。ではまず足立先生の本からいきましょう(この項平成15年9月3日記載)。
「21世紀の健康エコハウスいい家・ダメな家」
足立博 エール出版 1400円 ★★★★
足立博氏の近刊である。この本は私が初めて読んで衝撃を受けた氏の本「良い住宅・ダメな住宅・ムダな住宅・98年版」の、その後の外断熱ブームや設備機器の進歩を受けた改訂版という性格もあるが、さらに焦点を絞った高気密・高断熱住宅とは何かに関する各論である。もちろん高気密・高断熱住宅についてよく知らないという人には絶対のお勧めだが、前作を穴のあくほど熟読した私にはさほどのインパクトは無く、★は4つ。この本の第一の特徴はFPの家のモデルハウスに多くのページを割いていることである。氏自身が語っているとおり高性能住宅の快適性は、いくら口で表現しようとしても実際に住んでみないとなかなかわかるものではないからであろう。その意味でいうと離れて住んでいる家族が集合する機会が多く、また夏の盛りでもあるお盆の時期、または基本性能の差が実感できる寒い年末年始の休み時などに実際にこの本で紹介されているようなFPの家に気軽に触れる機会がもっとあったらいいと思う。ちょっと本の感想からは離れるがFPの家の事務局に注文をつけるとすればもう少し実際に建てた家のデータを加盟工務店から収集・分析しその結果を、広くインターネット等で公開してほしい。C値Q値はもちろん、酷暑極寒時の家の内外の温湿度差、温度の日内変動、部屋と部屋の温度差、防音性、地震があった地域での被害状況、平均的な本体価格等、消費者が知りたいことは山ほどある。それらを正しく、的確に伝えれば感性に訴えるモデルハウスが少ないというFPの家の不利を補うことが出来るだろう。単にイメージ戦略だけで勝負すれば大手との勝負は無理と思う。
さて、本の感想に戻って二つ目の特徴はFPの家を凌駕する可能性を持った新しい工法の紹介である。その代表はポリスチレンを構造用合板でサンドイッチする北州ハウジングのSIPs工法だ。現状では施工地域が宇都宮以北に限られかつポリスチレンの断熱性はウレタンに劣る等の欠点はあるようだが将来性は十分ある。現状では全国どの地域でも確実に高性能を期待できるのはFPの家しかないと思われるが、氏もこの本の中で述べている通り、FPの家に対抗しうる健全な競争相手としてこのような高性能住宅が全国的に選択肢に入ってくることがFPの家のさらなる進化をもたらすことになろう。
納得の間取り日本人の知恵袋----日本人らしい生活空間とは----
吉田桂二 講談社プラスアルファー文庫880円 ★★★★★
住宅建築家としての筆者の長年の御経験に基づく具体的な提言をまとめており、ハウスメーカー・有名建築家等の提灯記事や広告で満ちあふれた豪華ムックを何冊読んでも手に入らない間取りに関する真の知恵が身に付く本。まず伝統的な日本住宅の間取りとその住まい方の利点をのべ、それが近年変質してきた実態、具体的には筆者の言う「小間割間取り」とその弊害をあげ、それを解決する手段としていくつかの部屋をまとめてゾーンとする考え方を述べている。実際その問題意識を持って各ハウスメーカーの代表的な間取りを見ると南入り玄関とそれに続く廊下及び階段によって一、二階とも左右に分断されてしまった小間割間取りがいかに多いことか。また、ドアと比べた引き戸の効用も説得力があり、私も実際新居の室内建具には全て引き戸を用いた。住宅からとにかく日本的なものを消し去りたい、お菓子の家のように見栄えのいい洋風の家を建てたい、使い勝手の悪さなどたいした問題ではないという人(それはそれで一つの信念として間違いではない)以外には絶対お勧めだ。
建てどき
藤原和博 情報センター出版局 1700円 ★
温暖な地域で核家族向けの美しく機能的な一戸建てをある程度敷地の余裕を持って建てられる、というごく限られた恵まれた読者には大いに参考になる本。「ネオジャパネスク」と著者が呼ぶ日本の伝統に根ざしかつ新しい時代の感性に訴える木造軸組住宅を作るための智恵や工夫が満載だ。住宅が人の暮らしを盛る器である以上、家造りに感性や美的感覚を重視するこのような方向もあって良い。しかし、オリジナルの玄関ドアや洗面ボウル等細部までこだわってご自分が満足できる家を建てられた筆者の喜びは十分伝わってくる一方、外断熱を採用しているにも関わらず住宅の気密・断熱・日射制御、耐振性等の基本性能に関する記述は数字の裏づけに乏しく、私のようにそれらを重視する人にはやや物足りないだろう。寒冷地や台風銀座、地震多発地域といった厳しい自然条件下に住まいを構えたい方や、予算や敷地に余裕のない方から見ても気候の良いところに住んでるお金持ちの優雅なお遊びと言われて仕方なさそう。ところで、第28話の題名であり、またこの本の腰巻きのキャッチコピーである「45歳を過ぎて建ててはいけない」とのご高説は本文を読み進んでもその理由にいまひとつ説得力がない。要は細かいことまで自分の好み通りにするには業者と丁々発止やり取りできる能力と体力が必要と言うことなのだが、それは信頼に足る業者をみつけある程度希望と予算等の条件を言った後、任せてしまえばいいだけの話。ぱっと見の外観や間取り、予算だけで全てを決めてしまう安易な態度もどうかと思うが、逆に家造りにそこまで構える必要もないのではと私は思う。
人を活かす木の家 木の家を活かす人―職人社長と建築博士が語る自然志向・健康住
宅
赤塚 幹夫 地濃 茂雄 ビジネス社 古本屋で百円 おすすめ星の数はゼロ
新潟県を代表する住宅建築会社夢ハウスの宣伝本だが、現在県内のブックオフ各店には百円コーナーに必ず一冊、ところによっては十冊以上もあるというくらいあふれている。それだけ古本屋に数が揃うと言うことは買う必要がない本であることの証明でもあるのだが、どうせ百円ならと話の種に買ってみた(我ながら物好き)。内容は木の家は木をよく知る職人にまかせれば安心、と訴える第三章まで及び第五章からなる部分と、やや数値に基づいた快適性能や住宅の間取り、使い勝手等の一般論について語った第四章及び第六章以下に見事に分かれている。要は前者は現に資産を有し昔気質の親世帯のおじいさんに、後者は借り入れ能力があり住宅知識が豊富な今時の子世帯のお父さん、お母さんに受け入れられるようにという欲張りな企画だが、どうやら章ごとの分担執筆と思われ両方の主張は全くかみあっておらず、結果的に消化不良になっている。例えば第四章では断熱について触れているがC値Q値や換気システムについて具体的な記述は無いし赤塚社長自身も少なくとも多少の断熱については異議はないようだが高気密・計画換気についての反対意見を再三述べている。私自身は前半の社長の木に対するこだわりについて述べた部分や社長自身のサクセスストーリーは読み物として面白かったが、もはや一般施主でもある程度知識のある人は住宅の強度には柱よりむしろ構造用合板や建築金物、基礎の構造が、寿命には断熱材の結露防止や良好な床下換気、薬品による確実なシロアリ防除がより重要であることを知っている。その社長こだわりの柱にしても無垢より集成材の方が強度的に安定しているというのももはや常識に近い。またウレタンに比べかなり断熱性の劣るビーズ法ポリスチレン製でこの本には厚さも熱抵抗値も記載が無い夢パネルなる断熱パネルがいかに優れていたとしても、家全体として気密がとれていなければ自然換気で失われる予測不能な熱量が災いし、省エネでかつ均一に暖かいFPのような住宅の実現は難しいであろう。そして気密が確保できれば次は当然計画換気が必要になるはずだ。「高気密住宅では観葉植物は一週間で枯れる」などという見てきたような嘘(現に私メディカル越後の家の観葉植物はみな元気です。特に寒さを嫌うポトスは以前の家よりはるかに元気。)や「最近の外断熱・高気密・機械換気の家ばかり作っている建築家はひきこもってしまう感性の持ち主」などという根拠に乏しい同業者の悪口を放言する前に謙虚に今日の住宅のあるべき姿を考える姿勢が欲しい。
結論としては夢ハウスの建てる家を説明する本としてはもちろん不合格と思うが、さらに言えばその元である同社の家造りの考え方の根本(木は活きている、木は自然のままが一番、木の呼吸をさまたげるのはダメ、木が活きる工法の住宅に住めば人間も健康になるに決まっている、生き物である住宅の快適さはあくまで感性で語るべきでありそれを数値化して比較するなんてのはもってのほかというワイルドな考え方)もそろそろ時代の流れに合わなくなっており企業として「改訂」が必要な時期に来ているのでは無かろうか。いささか批判が冗長になったが地元企業に期待するがゆえの苦言とご理解ください。
リクルート出版刊の家造りを考え始めた人の多くが一度は手にする月刊誌。住宅メーカーや建材、設備等の最新の情報が豊富で毎号家造りの基礎知識を一通りまとめたコーナーもあり家造り初心者にはおすすめ。私も数号買って設備等をいくつかこの雑誌の記事や広告を手がかりに選んだ。特に毎号組む特集記事の知識は月刊誌ならではの最新かつ実際的なもので大いに役に立つ。広告や提灯記事は宣伝資金が豊富な大手や地域的に多くの読者が存在する関東関西に偏っており、また全体にデザインやイメージに重きを置きすぎる傾向もあるのでやや注意が必要だがそのことを承知で地域のミニコミ、口コミの業者の評判、建築技術の情報を別途適宜補うようにするのが賢明な読み方と思う。
マンガでわかる家づくり、マンガでわかる家づくり2、はじめての家づくり ★★★
上記月刊ハウジング連載のマンガを書籍化したもの。連載開始から何年か経っており設備や気密断熱のレベル等やや古くなった記載もあるが家づくり初心者が気楽に基礎知識を得ることが出来る良書。「マンガでわかる家づくり」 の冒頭の欠陥住宅・悪質業者の話は真に迫っておりおそらく実話をいくつか組み合わせ多少脚色したものと考えていいだろう。やや脅かしすぎのきらいもあり、これを読んで怖くなり家づくりをやめたなどと言うことがあっても困るが一度は読んでおいていい。他に資金計画、近隣問題、二世帯住宅など今日的な問題も多く語られている。私はマンガには詳しくないが絵も癖が無く語り口はユーモアに富んでいて読みやすい。